ハート・ロッカー

カテゴリー

下馬評を覆したアカデミー賞

技術よりも志
アバターよりも人間
パンドラよりもイラク

ロバート・アルドリッチ監督「地獄へ秒読み」で描かれた爆発物処理班の緊張感!
、戦場に過剰適応してしまうクリストファー・ウォーケンとそれを救うデ・ニーロのような友情(日常、非日常含)、
カーツ大佐のような狂気のアポカリプス感、
最近だと同じイラク戦争の凄惨さを訴えるために
事実とフェイクを入れ替える「リダクテッド 真実の価値」(デ・パルマ監督)
に見られた様な巧妙かつ切実な叫び・・・・
本作ではそれぞれが中途半端だ。
それらを狙うならちゃんと狙うべきだ。

ではナゼ中途半端になっているのか?

緊張感
ストーリーの進行とソレに伴う役者を追うカメラワークが散漫過ぎる。
それは手持ちカメラの功罪の功であるドキュメンタリー風の臨場感を重視するのであれば、
主人公3人と他の兵隊との区別をもっと強調する必要がある(リアルを求めてストーリーが追えないのは本末転倒)。
功罪の罪はカメラがブレ過ぎで正視できない観客もいるのでは?
この手持ちカメラの罪罪が前半延々と続く。

アポカリプス感
ベッカム少年を知る→×××→捜す→家→○○○→帰国→家族→ラスト
この重要な一連があまりに心象風景オンリー過ぎる。
読解力のある観客に行間を読むことを委ねすぎ。

例えばDVDをうまく使ったり、家にいた人は何者か?女性は何を叫んでいたのか?
主人公の心に食い込んだ事が×××オンリー。
戦場から電話で家族に何も言えなかった重さもラスト(戦争は麻薬という謳い文句)で
片付けてしまう安易さ等々、腑に落ちないまま終幕。
言いたい事はわかるが、技術的な物足りなさに加えて
難しいテーマを盛り込みすぎて廻しきれてない感が否めない。
過去の戦争を題材にした名作も基本的には
テーマは人間だがその軸足になるテーマは絞られている。

しかし今回の受賞で感じたことは

クラッシュ」「ノーカントリー」「スラムドッグミリオネア」に続いて本作、
低予算でも次世代の人々に見せるべき作品が
華やかな大作や3D作品よりも依然として重視されているという事と
イラク戦争に対する爆発寸前の米国民感情は解体処理不能という事ぜよ・・・(汗)






 
この記事へのコメント
 ハートロッカー、アカデミー賞受賞したというので、行かない?と妻に誘われていたのですが、戦争映画?ということもあってもうひとつ乗り気にならなかった。
 内容を確認してからと思っていたのですがOさんのプロの視点による感想ではっきり決めました。行かないと。
 心に訴える魅力的なテーマがない映画には関心がありません。
 3Dという新テクの魅力だけではアバターも観る気はしません。
 むしろ地元の文化センターで上映される昔の名画、死刑台のエレベーター、地下室のメロディー、いとこどうしの三本立てに期待しています。
 久しぶりの三本立てに耐えられるか?
 しかし、学生時代に観た死刑台のエレベーターに衝撃を覚えた記憶があります。それが何だったのか、確認する期待が大きい。
Posted by 昭和のマロ at 2010年03月14日 06:54
マロさん、「ハート・ロッカー」はテクニックよりも志のある映画として褒めたつもりなのですが・・・、観る気を無くされたのであればすいません(汗)。
「地下室のメロディー」はジャン・ギャバンの脂が乗っている全盛期、アラン・ドロンは「太陽がいっぱい」の直後で、まさにこの作品は役者が違いましたよね。
シャブロルの「いとこ同志」も再見したいです!!
Posted by ogawa-Pogawa-P at 2010年03月16日 01:10
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
ハート・ロッカー
    コメント(2)