『パワー・オブ・ザ・ドッグ』主演ベネディクト・カンバーバッジ

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広大な荒野を舞台に、繊細な人間模様を描いた作品です。

しかし、その繊細さは、シナリオや演出において、

もう一歩踏み込んだ表現が欲しかったという印象も残ります。

本作は、観客に物語を「嗅ぎつける」ことを要求します。

登場人物たちの心の奥底にあるものを、

セリフや行動から読み取らせるという手法は、賛否両論を呼ぶでしょう。

冒頭の牛の移動シーンは、「赤い河」の牛の大移動シーンを彷彿とさせます。

現代において、このような大規模な撮影はCGに頼らざるを得ないのかもしれません。

実写ならではの重厚感も失われているように感じられます。

ベネディクト・カンバーバッチの演技は素晴らしいですが、

作品全体が彼の演技に頼りすぎている感は否めません。

観客の想像力を掻き立てる演出は魅力的ですが、

一方で、観客の理解力に任せすぎている部分もあるように思います。

「推して知るべし」ではなく、「嗅いで知るべし」という表現が印象的です。

しかし、何を嗅ぎつけるべきなのか、

観客に明確なヒントが与えられているとは言えません。

馬の匂い、馬具の匂い、人間の匂い…これらの比喩的な表現は、

作品の世界観を豊かにしますが、同時に、観客を迷わせる可能性も孕んでいます。

この映画は、嗅覚を研ぎ澄ませ、

登場人物たちの心の奥底にあるものを「嗅ぎつけよう」とする観客にとって、忘れられない作品となるでしょう。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』主演ベネディクト・カンバーバッジ



 
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