『極悪女王』 ばかやろー!格闘技を見に来てんじゃねーんだよ!
子どもの頃以来、
プロレスや格闘技とは縁遠いと思っていた私が、
10年以上前に両国国技館「ジ・アウトサイダー」で聞いた、
観客の叫び声。
「ばかやろー、格闘技を見に来てんじゃねーんだよー!」
その言葉は、私の心に深く刻み込まれた。
「極悪女王」を観ている間、
何度もあの叫び声が頭をよぎった。
ゆりやんか、ダンプか、香か、吉田のゆりちゃんか、
それとも全く別の何かを観ているのか。
それはもはやフィクションかドキュメンタリーかという枠組みを超え、
シナリオやドラマ、プロレスそのもの・・・四角いジャングルから飛び出した、
場外乱闘のような壮絶なバトルロイヤルだった。
ジャッキー佐藤、マキ上田、ジャガー、デビル、ブル、クレーン、
飛鳥、長与、ダンプ、ゆりやん、剛力、唐田、根矢・・・
ダイナマイト、ラブリー・・・。
個性豊かなレスラーたちが織りなすドラマは、
観客を真剣に、そして熱狂的に巻き込んでいく。
先日、メディアにあがっていた、
高山の名は・・ここでは触れない・・私には触れられない。
ダイビングヘッドもパンチもキックも要らない。
素顔と素手と血で真剣に勝負するレスラーたちの姿に奮えた。
それは、勝敗を超えた、虚実とは異次元の何か、
人間そのもののドラマだった。
20世紀を代表するプリマバレリーナと呼ばれた、
ガリーナ・ウラノワが言っていた。
最も観客を引きつけるものは何か?
抜群の身体能力でもなく、美しい容姿でもなく、
訓練を積んだテクニックでもないと・・・
その人の生きざま、だそうだ。
両国のあの夜、
観客が叫んでいたのは、
単なる勝利や敗北ではなかったのか、
今でもわからない。
それは、何かもっと根源的なもの、
魂の叫びだったのかもしれない。
迷わず行けよ、行けばわかるさ。
あばよ